ファクタリングは、2003年頃より、融資では満足に資金調達できない法人向けの資金調達方法として、メジャーになって きました。
しかし、ファクタリングの仕組みを知らない方も多いでしょう。
「個人向け給料ファクタリングは違法?」
「売掛金を売却して、資金化するって本当に大丈夫?」
そんな心配をお持ちの方に向けて、ファクタリングは法に基づいたサービスであることを分かりやすく解説していきます。
個人向け給料ファクタリングは、ファクタリングの一種と位置づけられていますが、違法です。
給料ファクタリングは違法
個人向け給料ファクタリングは違法です。
まずは、そもそも給料ファクタリングとはどのようなサービスか説明します。
個人向け給料ファクタリングとは
給料ファクタリングとは、個人の給料を債権として業者が買い取り即日資金化する金融サービスです。
法人向けのファクタリングを「個人向けのサービス」に変えた形で、2019年頃から世の中に知られるようになりました。
給料ファクタリングの仕組みは、以下の通りです。
①利用者が勤務先から受け取る予定の給料を債権として給料ファクタリング業者に売却する
②業者は利用者に手数料を差し引いた金額を先出しする ③業者は翌月の給料日に、勤務先から利用者に入金された給料を回収する |
口コミに騙されない
給料ファクタリング業者は、以下のような謳い文句でサービスを訴求しています。
- 最短即日で給料の前払い
- 借金ではないため金利は発生しない
- ブラックでも利用可能
昨今の社会情勢もあいまって、カードローンや銀行にて借り入れが難しい、いわゆる金融ブラックの人が現金を調達する裏ワザとしてその存在が広まりました。
一見便利そうなサービスですが、冒頭でも紹介したように個人向け給料ファクタリングは違法です。
令和2年3月5日に、給料ファクタリングの被害を重く見た金融庁が以下の内容を発表しました。
「貸金業法、出資法違反で契約無効とする、また、刑事罰の対象となる」
個人向け給料ファクタリングの何が違法なのか
給料ファクタリングの何が違法なのでしょうか。
サービスの実態を詳しく解説していきます。
①法外な利息
業者はこれまで、給料ファクタリングは給与債権の売買であり貸金にはあたらないとして、貸金業法の上限金利を大幅に超える法外な手数料を利用者から取っていました。
例えば、月給20万円の会社員が給料ファクタリングを利用し「手数料」2万円を差し引いた現金18万円の前払いを受けたとします。
この「手数料」は実質的に融資の利息にあたり、年利換算すると240%です。
利息に関しては、利息制限法と出資法で上限金利が20%と定められています。
今回の事例での年利240%は、この上限金利を大幅に超える法外な利息です。
中には、年利換算で1,000%を超える被害も報告されています。
金融庁はこのような法外な利息による被害を重くみたため、今回注意の声明を出すに至りました。
②給与債権の譲渡は認められていない
そもそも、給与債権の他人への譲渡は認められていません。
これは、労働基準法の「賃金は、直接労働者に支払わなければならない」という直接払いの原則に基づいた考えです。
このことから、給料ファクタリングの仕組み自体が法的に認められていないといえます。
③その他にも多くの危険性がある
ここまで、法外な利息や給与債権の譲渡の違法性について説明しましたが、その他にも以下の問題点があると指摘されています。
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契約書さえ交わさないケース
金融サービスを利用する際は契約書が必須ですが、給料ファクタリング業者の中には契約書さえ交わさないケースもあります。
その結果、当初説明された手数料を大幅に超える、多額の手数料を求められたという被害が発生しています。
被害にあわないように十分に注意しましょう。
大声での恫喝や勤務先への連絡
給料ファクタリングでは「手数料」と称した法外な利息を支払うことを求められます。
また、融資とは異なり給料日に一括での返済となるため、生活費がひっ迫し指定日に返済できない方もいるそうです。
そうなった時に給料ファクタリング業者が行っているのが、勤務先への連絡です。
勤務先に取り立ての連絡が入ると自身の信用を失ってしまい、退職に追い込まれてしまうリスクがあります。
さらに、給料ファクタリング業者が自宅を訪れて、大声での恫喝など強引な取り立てを受けたという被害も発生しています。
大事な家族を守るためにも、給料ファクタリング業者とは関わらないようにしましょう。
個人情報の漏洩
これまで説明してきた内容からも分かるように、「まとも」とはいえない給料ファクタリング業者が多数いると考えられます。
そこで利用者にとって不安なのが、個人情報の管理です。
いわゆるヤミ金業者は、利用者名簿を作成して、そのリストの売買をしているといいます。
給料ファクタリングの利用者名簿も「お金に困っている人リスト」に載せられて、別の給料ファクタリング業者やヤミ金業者に売られている可能性が大いに考えられます。
個人情報を守る観点からも、給料ファクタリングの利用は控えましょう。
ファクタリング業者が違法とされた事例
ここでは、ファクタリング業者が違法とされた下記2点の事例を紹介いたします。
・給料ファクタリングが違法とされた事例
・ファクタリング業者が違法とされた事例
給料ファクタリングが違法とされた事例
2020年3月に東京地裁にて、給料ファクタリングは貸金にあたるとの司法判断が示された事例についてご紹介します。
給料ファクタリング業者(原告)が譲渡人(被告)に対し、7万円の債権を4万円で買取り、4日後に支払う契約で買戻し日の設定があったが、譲渡人が支払いを怠ったことにより、業者が譲渡人に対し金銭の支払いを求める訴訟を提起した事案である。
この事案に対して、東京地裁は以下の判決を出しました。 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は、原告の負担とする。 |
上記は、給料ファクタリングは貸金業法や出資法という「貸金」にあたるとの司法判断が示された事例です。
つまり、給料ファクタリングは刑事罰の対象になるため、利用者は返済する義務を負わないという司法判断が初めて示されました。
すでに給料ファクタリングを利用してしまい、被害にお心当たりがある方は、以下のページを参考に専門の窓口に相談することをおすすめします。
ファクタリング業者が違法とされた事例
2017年8月に、「ファクタリング会社を装った闇金業者」が、違法サービスとして摘発された事例についてご紹介します。
債権を買い取って回収を代行するサービス「ファクタリング」を装ったヤミ金融が横行し、警察当局が取り締まりを強めている。
大阪府警は2017年8月、回収業務と称して高金利での貸し付けを繰り返したとされるグループのメンバーを逮捕。摘発の動きは各地に広がりつつある。
手形割引に変わる資金繰りの手段として利用する企業が増えるなか、サービスへの法規制を求める声も上がる。
上記は、「ファクタリング会社」ではなく、「ファクタリング会社を装った闇金業者」が摘発された事例です。
この事例では「高金利での貸し付けを繰り返した」とありますが、そもそもファクタリングは、売掛金の売買なので利息が発生することはありません。
例えば、100万円の売掛金をファクタリング手数料10%で売却する契約の場合、買取代金90万円、手数料は10万円とファクタリング会社に提示され、それ以上手数料がかかることはありません。
契約の際に提示された金額以上の支払いを後から求められた場合は、違法業者の可能性が高いです。
契約を進める段階で、「これは違法ではないか」と思った際には警察に相談してください。
ファクタリングは違法ではない
ファクタリングに違法性はありません。
ファクタリングは企業が所有している売掛金をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた金額を「買取代金」として受け取る資金調達サービスです。
売掛金の売却による資金調達になるため、融資や出資などに該当せず、金利や利息が発生することもありません。
そのため、ファクタリングは貸金業法などの金融関連法に属していません。
ファクタリングは国も推奨している資金調達方法
経済産業省中小企業庁は、中小企業者が融資に依存せず、売掛債権を利用した資金調達を行うことを推奨しています。
その理由として以下2点が挙げられます。
①不動産担保に頼らない資金調達の促進
②金融機関の審査対応が厳しい
それぞれご説明していきます。
① 不動産担保に頼らない資金調達
多くの企業が、資金調達に不動産担保融資を利用しています。
しかし、年々不動産価値は低迷しており、十分な不動産担保を所有していない中小企業は、担保不足から満足な資金調達をすることができません。
このことを問題視した中小企業庁は、2003年頃より、売掛金を売却して資金化するファクタリングの利用を推奨し始めました。
売掛金による資金調達であれば、不動産のように価値が変動することなく、中小企業も無理のない範囲で資金調達できると考えられています。
② 金融機関の審査対応が厳しい
中小企業が、金融機関で融資を受けようとしても、審査対応が厳しいのが現状です。
具体的には以下のような例が挙げられます。
・大手企業に比べて調達可能金額が低いにもかかわらず、審査準備や審査に時間がかかる。
・外的要因に左右されない十分な返済能力が認められなければ、融資を受けることができない。
上記のように金融機関で融資を受けるには時間と手間がかかります。
しかし、ファクタリングであれば、売掛先の与信を重視した審査を行います。
そのため、柔軟な審査で資金調達を行うことが可能です。
ファクタリングが違法ではない法的根拠とは
ファクタリングには2社間ファクタリング、3社間ファクタリングがあり、契約方法によって適用する民法は異なります。
2社間ファクタリングは「民法第555条(売買)」、3社間ファクタリングは「民法第466条(債権の譲渡性)」に当てはまるので違法ではありません。
それぞれの契約方法別に詳しく見ていきましょう。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2社間で売掛金の売買を行うため、民法第555条(売買)に該当します。
民法第555条(売買) 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。 |
2社間ファクタリングを利用する場合の売買契約は
利用者(売る人)がファクタリング会社(買う人)に売掛金を売却する
ファクタリング会社(買う人)が利用者(売る人)の売掛金を買い取る
という意思が一致した時点で成り立ちます。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングは、利用者と売掛先、ファクタリング会社の3社間で売掛金の譲渡を行うため、民法466条(債権の譲渡性)に該当します。
※民法第446条(債権の譲渡性)は2020年4月1日に改正されました。
民法第466条(債権の譲渡性) ① 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。 ② 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。 |
3社間ファクタリングを利用する場合の債権の譲渡性は、
利用者が所有している売掛金を譲渡したい場合、
売掛先が売掛金の譲渡を禁止、もしくは制限をかけていても譲渡することは可能
ということになります。
つまり、利用者が売掛金を譲渡したい場合、ファクタリング会社への譲渡は可能です。
違法な業者を見分ける3つのポイント
ファクタリングがメジャーになるにつれ、違法な業者が増えているのも現状です。
違法な業者を見分けるために、大きく3つのポイントについてご説明していきます。
違法な業者を見分けるポイントは以下の3つです。
- 手数料は相場の範囲内
- 企業概要が明記されている
- 契約書の内容に不明瞭な点はないか
①手数料は相場の範囲内か
ファクタリングの手数料の相場は以下の通りです。
・2社間ファクタリング : 平均10~20%前後
・3社間ファクタリング : 平均2~9% |
売掛先の与信や、売掛金の質によって手数料は変動しますが、基本的には利用者とファクタリング会社の2社間で契約する2社間ファクタリングの方が3社間ファクタリングよりも手数料が高くなります。
上記のファクタリングの手数料の相場以上であれば、違法業者と認識した方が良いでしょう。
②企業概要は明記されているか
通常、会社のホームページには以下情報が記載されています。
・会社名 ・代表者名
・所在地 ・資本金 ・設立年数 ・電話番号 ・事業内容 ・アクセス方法 |
上記の内容に加え、業績や沿革などを記載している企業も多くあります。
違法業者は、企業情報の公開が少ないことが多いので、「公開情報が少なすぎる」と心配な場合は利用を控えておいた方が無難でしょう。
③契約書の内容に不明瞭な点はないか
ファクタリング契約を締結する際に、利用者とファクタリング会社の契約内容を明示する契約書は必須です。
契約書が用意されないファクタリング会社は違法業者なので利用はやめましょう。
通常なら、ファクタリグ契約を進める際には、担当者が1つ1つ契約書の内容を説明します。
契約内容に納得した上で押印するので、下記2点の場合は注意してください。
- 説明がないまま押印を強要される
- 不明点について説明してもらいない
個人向け給料ファクタリングはおすすめできない
給料ファクタリングとは、個人の給料を債権として業者が買い取り、即日現金化する資金調達方法です。
一見便利に思えるサービスですが、以下3つの問題点が指摘されています。
①法外な利息
②給与債権の譲渡は認められていない ③勤務先への連絡や個人情報の漏洩などのリスクがある |
このように多くの問題点があり、金融庁も注意を呼び掛けている違法なヤミ金ですので、利用は控えてください。
スリーラインで提供している法人向けファクタリングは違法ではありません。
2社間ファクタリング、3社間ファクタリングはそれぞれ法律に基づいたサービスなので安心してご利用いただけます。
また、過去摘発されているのは、ファクタリング会社を装った闇金業者なので、ファクタリングを利用する際には違法業者を見極めるようにしましょう。
違法業者を見分けるポイントは今回ご紹介した3つです。
・手数料は相場の範囲内か
・企業情報は明記されているか
・契約書の内容に不明瞭な点はないか