資金ショートが起きると、たとえ帳簿上は黒字であっても営業活動に必要な支払いができなくなり、「黒字倒産」に陥る恐れがあります。防ぐためには、会社の資金繰りやキャッシュフローを常日頃から把握することが大切です。
資金ショートが発生する原因はいくつかあるので、対策について知り、運転資金に余裕をもたせた事業経営を心がけましょう。
この記事では、下記3点について説明します。
・資金ショートとは?
・資金ショートの4つの原因
・資金ショートの7つの対策
資金繰りやキャッシュフローの改善にお悩みの方や、早急に資金ショート対策に取り組む必要がある方は、ぜひ最後までお読みください。
資金ショートとは?
資金ショートとは、手元の現金や預金が不足し、支払いができなくなってしまう状態です。
資金ショートは「債務超過」と混同されがちですが、この2つは別の状態です。
赤字決算が出ても、債務超過状態になっても、会社がすぐに倒産するわけではありません。
しかし、資金ショートを起こすと会社が経営破たんするリスクがあります。
ここでは、資金ショートの基本的な考え方を説明します。
資金ショートと債務超過の違い
資金ショートと債務超過は混同されやすいですが、実は資金ショートの方が債務超過よりも危険な状態です。
まず、債務超過とは、貸借対照表の「負債」の項目が、「資産」の項目を超過していることを表します。
つまり、会社が借りているお金(=負債総額)が、会社の保有する固定資産や流動資産(=資産総額)を上回った状態です。
もし債務超過の状態となっても、ただちに会社が経営破たんするわけではありません。
一方で、資金ショートとは、すぐに使える現金や預金(キャッシュ)が枯渇した状態を意味します。
当座の支払いがいっさいできなくなってしまうため、資金ショートは事業経営にとって危機的状況です。
資金ショートしたら会社はどうなる?
会社は大赤字や債務超過を起こしても、それだけで倒産するわけではありません。
注意が必要なのは「資金ショート」です。
資金ショートを起こすと、会社の信用力がなくなり、資金繰りや立て直し策が困難です。
会社は営業活動を行ううえで、税金、保険料、手形や売掛金の支払いなど、毎月多くの支払いをしています。
資金ショートを起こし、手元の現金や預金がないと、毎月の支払いができなくなります。
賃借対照表上は黒字が出ていても、手元の現金がなければ営業活動に必要な支払いができません。
帳簿上は黒字であるのにもかかわらず、会社の資金繰りが困難になった状態を「黒字倒産」といいます。
そのため、資金ショートは必ず避けねばならない危機的状況です。
資金ショートの4つの原因
資金ショートが起きるのは、下記4点のケースに当てはまる場合です。
・突然の大きな支払いがあった場合
・売掛先の倒産や売掛金の支払い遅れがあった場合
・突然の売上の減少した場合
・火事や自然災害などの外部的要因による場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.突然の大きな支払いがあった場合
資金ショートを起こす可能性があるのは、突然の大きな支払いがあった場合です。
よくある資金ショートの事例が、無理な大型受注によって、多額の投資が先行してしまった場合です。
また、営業活動中の事故の損害賠償や、大規模なリコールの発生、生産設備の補修など、突発的な出費が発生する可能性もあります。
商品やサービスを掛売りする場合、売掛金は後日入金されます。
そのため、売掛金の支払いを待つあいだ、税金、保険料、手形などの月々の支払いは、手元のキャッシュでまかなわなければなりません。
日頃から運転資金に余裕をもたせ、手元に十分な現金や預金が残るよう、キャッシュフローを意識した事業経営を行うことが大切です。
2.取引先の倒産や売掛金の支払い遅れがあった場合
帳簿上は十分な売上があっても、手元に現金や預金が入ってこないケースがあります。
たとえば、取引先が経営破たんし、売掛金を回収できなくなった場合です。
表面上は経営状態が良好でも、企業の倒産は突発的に発生します。
大口の取引先の売掛金を回収できないと、手元の資金や現金が枯渇し、連鎖的な倒産が発生するケースも少なくありません。
とくに重層下請構造が多い建設業界において、連鎖倒産は日々起きています。
売掛金を確実に回収するうえで大切なのが、売掛先の与信管理です。
与信管理業務には大きな手間やコストがかかりますが、「売掛先の経営状態は問題ないか」「支払い能力は悪化していないか」をチェックすることが大切です。
3. 突然の売上減少した場合
売上が想定以上に落ち込んだ場合も、手元の現金や預金が不足し、資金ショートに陥る恐れがあります。
たとえば、ビジネス環境の悪化や競合他社の業績アップ、情報セキュリティ事故や内部不正による企業イメージの悪化など、売上が急に落ち込む原因は多種多様です。
売上が多少増減しても、手元の資金や預金でまかなえるよう意識しましょう。
4.火事や自然災害などの外的要因による場合
日頃の資金繰りに問題がなくても、外的要因によって急な資金ショートが発生する恐れもあります。
たとえば、火事・風水害・地震災害や、大規模なサイバー攻撃、新型コロナウイルスをはじめとした感染症の流行などによって、事業経営が大きなダメージを受けた場合です。
2011年3月11日に起きた東日本大震災でも、被災企業が冠水や地盤沈下によるインフラ設備のダメージを回復できず、資金ショートを起こす事例が相次ぎました。
火事や自然災害などの外的要因は、会社の資産に大きな損害をもたらします。
外的要因は予測できないからこそ、平時の備えが大切です。
資金ショートを未然に防ぐ7つの対策
資金ショート対策として、下記7点が有効です。
・請求漏れ・未入金の確認
・コストの削減(支出を減らす)
・営業管理の見直し
・税金や保険料の支払いを待ってもらう
・銀行に対してリスケの交渉を行う
・取引先への支払いを待ってもらう
・ファクタリングで現金を確保する
それぞれ順に見ていきます。
1.請求漏れ・未入金の確認
まずは、売掛先の管理体制を強化し、未入金や請求漏れの売掛金がないかチェックしましょう。
売掛金を確実に回収する仕組みをつくることで、手元に入るお金を増やし、資金繰りやキャッシュフローを改善できます。
もし、売掛金を回収できていない掛取引がある場合は、すぐに売掛先へ確認することが大切です。
2.コストの削減(支出を減らす)
運転資金が底をつかないためには、手元から出て行くお金を減らすことも大切です。
そのため、営業活動の支出を見直し、コストの削減に取り組みましょう。
コストが増えれば増えるほど、営業活動の利益率が下がり、現金や預金が不足してしまいます。
いきなり会社の財産である人件費などを見直すのではなく、赤字事業の廃止や役員報酬の削減など、できる範囲でコストの見直しを進めましょう。
資金繰りがある程度改善できても、定期的にコストを見直す仕組みをつくることで余計な支出を減らし、第2・第3の資金ショートの発生を防げます。
3.営業管理の見直し
売掛金を確実に回収できる仕組みをつくるうえで、売掛先との契約条件を見直すことも大切です。
「売掛金の回収条件が甘くなっていないか」
「度重なる売掛金の支払い遅延が発生していないか」
など、営業管理を見直すことがポイントです。
また、売掛金の金額が多い売掛先ほど、経営破たんや支払い遅延が発生したときの影響も大きいです。
定期的に与信管理を行い、営業管理を見直しましょう。
4.税金や保険料の支払いを待ってもらう
もし現金や預金が不足してしまったら、税金や保険料の支払いを待ってもらうことを検討しましょう。
税金や保険料の滞納がつづくと、最悪の場合、関係当局が「差し押さえ(不動産、買掛金、預金など)」を実行する恐れがあります。
しかし、すぐに差し押さえが実行されるわけではありません。
事前に会社宛ての通知が送付され、それでも滞納がつづく場合は「差し押さえ」という流れです。
ただちに所轄の税務署や、保険料の納付先の自治体の窓口に向かい、支払いの一時保留や分割払いを申し出ましょう。
資金繰りが苦しいことを説明し、今後の支払い計画を明らかにすることで、支払いを待ってもらえるケースがあります。
5.銀行に対してリスケの交渉を行う
金融機関の借入金の返済が困難になった場合は、銀行融資のリスケジュール(リスケ)を申し出るという手段もあります。
リスケジュールとは、借入金の返済スケジュールを見直し、返済金額や返済期間を新しく設定することです。
リスケジュールを行うことで、毎月出て行くお金を減らし、資金繰りを一時的に改善できます。
税金や保険料の場合と同様、リスケジュールを申し出るときは、
「どのような計画で返済していくのか」
「返済金の原資はどうやって確保するのか」
を明らかにし、真摯に交渉を行う必要があります。
6. 取引先への支払いを待ってもらう
売掛先と交渉することで、売掛金の支払いを猶予してもらう選択肢もあります。
売掛先との信用問題に発展する可能性があるため、他に立て直し策がない場合にのみ実行すべき手段です。
支払い能力がないと見なされ、今後の取引停止につながる可能性があるため、支払い猶予を申し出る場合は慎重に考えましょう。
売掛金の支払いを待ってもらう場合は、売掛先に資金繰り表を提示し、今後の支払い計画を明らかにする必要があります。
万が一取引停止になった場合も想定し、新たなビジネスパートナー探しに動くなど、周到な事前準備が必要です。
7.ファクタリングで現金を確保する
ファクタリングとは、ファクタリング会社が売掛金を買取ることで、未払いの売掛金を早期に資金化できる金融サービスです。
ファクタリングには、売掛先との事前通知が必要な「3社間ファクタリング」と、売掛先に知られずに売掛金を資金化できる「2社間ファクタリング」があります。
ファクタリングを利用すれば、売掛金を最短即日で資金化できます。
たとえば、売掛先の支払いサイトが長く、売掛金の支払日より前に税金・保険料・手形の支払期限がやってくる場合は、ファクタリングの利用が効果的です。
売掛金の支払いを前倒しすることで、資金ショートを瀬戸際で食い止められます。
ファクタリング会社の与信審査によっては、営業利益の赤字や税金・保険料の滞納がある場合、債務超過に陥っている場合でも、ファクタリングサービスを利用できるケースがあります。
資金繰りの改善にお悩みなら、ぜひファクタリングの利用を検討しましょう。
資金のお悩み方はご相談ください!
会社経営にとって、資金ショートは赤字や債務超過よりも危険な状態です。
手元の現金や預金が枯渇するため、税金、保険料、手形、売掛金などの支払いができなくなり、事業活動の継続が事実上不可能になってしまいます。
資金ショートが起きるのは、下記4点のケースに当てはまる場合なので注意しましょう。
・突然の大きな支払いがあった場合
・売掛先の倒産や売掛金の支払い遅れがあった場合
・突然の売上の減少した場合
・火事や自然災害などの外部的要因による場合
万が一、資金ショートが起きた場合は対策として下記7点が有効なので覚えておきましょう。
・請求漏れ・未入金の確認
・コストの削減(支出を減らす)
・営業管理の見直し
・税金や保険料の支払いを待ってもらう
・銀行に対してリスケの交渉を行う
・取引先への支払いを待ってもらう
・ファクタリングで現金を確保する
資金ショートの原因と対策について知り、資金繰りやキャッシュフローを意識した事業経営に取り組みましょう。
上述した通り、ファクタリングは未払いの売掛金を早期に資金化できるため資金ショートに効果的な金融サービスです。