電子記録債権(でんさい)とは、売掛金や手形を電子化し、インターネット上でやりとりできる決済サービスです。
電子記録債権は「ファクタリング」と同様に、売掛金を早期資金化し、資金繰りを改善することができます。
電子記録債権とファクタリングには、それぞれ共通点があるため、
「電子記録債権とファクタリングの違いって何?」
「どのように使い分けるべきかわからない…」
このように感じる方も多いでしょう。
この記事では、以下の5点を説明します。
・電子記録債権(でんさい)とは
・電子記録債権のメリット
・電子記録債権とファクタリングは仕組みが違う
・電子記録債権を活用した「でんさいファクタリング」
・でんさいファクタリングのメリット・デメリット
電子記録債権の仕組みや、ファクタリングとの違いについて詳しく解説します。
また、電子記録債権とファクタリングのいいとこ取りをしたサービス「でんさいファクタリング」もご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
電子記録債権(でんさい)とは?売掛金を電子的に記録・管理する仕組み
これまで、企業間の取引で発生した売掛金や手形は、請求書や管理台帳など紙ベースで管理されてきました。
「電子記録債権」とは、売掛金や手形を電子的に記録し、ペーパーレスで管理する仕組みです。
通称、「でんさい」と呼ばれています。
事業者の資金調達を円滑化させるために、電子記録債権の仕組みが生まれました。
電子記録債権は、銀行・信用金庫・信用組合などの金融機関が加盟する「でんさいネット」で管理されます。
でんさいネットは、インターネットにつながったパソコンがあれば、どこでも利用できるため、これまでの紙ベースの取引よりも利便性が高くなりました。
でんさいの仕組みは?「でんさいネット」が全取引を統括
でんさいは、株式会社全銀電子債権ネットワーク(全銀)が運営する「でんさいネット」上で取引を行います。
でんさいの利用者は、各銀行の窓口や決済システムを使って売掛金や手形の取引をしますが、入口は違っても、実際にはすべての取引がでんさいネット上で統括されています。
そのため、全銀はでんさいを利用する企業の信用情報も取り扱っています。
また、個人の取引の場合も、全銀は借入の履歴やクレジットカードの利用履歴などを管理しています。
でんさいネットの取引きの流れ
でんさいネットによって、売掛金の発生から支払いまで、どのような流れで処理が行われるのでしょうか。
でんさいネットでの取引の流れは、以下のとおりです。
①支払企業と納入企業(下請け)が商取引を行う
②支払企業がでんさいネットに対し、「発生記録請求」を行う(でんさいの発生) ③でんさいネットから、納入企業(下請け)に発生記録の通知が行われる ④納入企業(下請け)が、支払企業とは別の企業(孫請け)と商取引を行う ⑤納入企業(下請け)が、最終支払先(孫請け)への債権譲渡のため、「譲渡記録請求」を行う(でんさいの譲渡) ⑤支払企業の口座から代金が自動的に引き落とされ、最終支払先(孫請け)の口座に払い込まれる |
なお、支払企業も納入企業も、直接「でんさいネット」とやりとりをする必要はありません。
金融機関の窓口を通じて、でんさいの取引が可能です。
でんさいに切り替える2つのメリット
でんさいを利用するメリットは、手形・売掛金それぞれの場合で異なります。
ここでは、それぞれの立場から、でんさいに切り替えるメリットを解説します。
手形取引から切り替える場合のメリット
手形の発行や管理には、様々な事務コストがかかります。
代表的なものが、手形に貼付する「印紙税」です。
また、支払企業が手形を振り出すときは、手形に受取人・金額・支払い期日などを記入し、押印しなければなりません。
手形を受取る納入企業側も、手形を紛失してしまうと資金化できなくなる恐れがあるため、手形を金庫などで保管し、厳重に管理する必要があります。
しかし、でんさいに切り替えれば、手形の電子データの管理はでんさいネットが行います。
もちろん、手形を紛失する恐れがなく、手形取引のコストやリスクを軽減できます。
手形は分割できませんが、でんさいは分割して取引できる点も覚えておきましょう。
また、2026年に手形が廃止される方針が決定したため、多くの企業が手形から電子記録債権へ移行することが予想されます。
掛取引から切り替える場合のメリット
でんさいは売掛金と違い、すべての売掛金の金額や帰属先を、でんさいネット上でいつでも確認できます。
そのため、売掛金を第三者に譲渡する場合などに、債権譲渡通知を行う必要がありません。また、すべての売掛金の状況が可視化されるため、その帰属先や支払いをめぐってトラブルが起きる心配もありません。
たとえば、支払企業が手形や売掛金の支払いを拒む「人的抗弁」が、でんさいでは原則として切断(制限)されるため、納入企業は安心して取引ができます。
でんさいとファクタリングの共通点
でんさいとファクタリングは異なるサービスですが、よく似た点もあります。
でんさいとファクタリングの共通点は、以下の2点です。
・売掛債権を譲渡できる
・支払期日よりも前に資金化できる
でんさいは「電子記録債権(でんさい)の譲渡」、ファクタリングは「売掛債権(売掛金)の譲渡」です。
どちらの手段でも、売掛金を早期資金化し、資金繰りを改善することが可能です。
自社の資金繰りの状況や、売掛先のでんさいネットへの加入の有無などを考慮して、でんさいとファクタリングを使い分けましょう。
でんさいとファクタリングは仕組みが違う
でんさいとファクタリングは、そもそも仕組みが違います。
でんさいとは、電子データとして記録された「電子債権」です。
一方、ファクタリングは「売掛債権(売掛金)」をファクタリング会社に譲渡し、資金調達を行う手段です。
これらを踏まえたうえで、でんさいとファクタリングの違いを2点解説します。
「貸し倒れリスク」が違う
でんさいの場合は、債権者(納入企業)が保証人になります。
そのため、債務者(支払企業)が倒産や経営破たんに陥り、でんさいが貸し倒れた場合は、債権者側に支払い義務が生じます。
一方、ファクタリングの場合は、売掛金をファクタリング会社に売却するため、利用者(納入企業)に支払い義務はありません。
売掛金が貸し倒れても、支払い義務はファクタリング会社が負います。
「契約締結の手間」が違う
売掛先がでんさいネットの加盟金融機関の口座を持っている場合、でんさいは契約締結の手間がかかりません。
でんさいネットを通じ、スムーズに取引が可能です。
また、新しい売掛先が増えても、共通のシステムを通じてやりとりできるため、積極的に新規顧客開拓を行っても安心です。
一方、ファクタリングの場合は、新しい売掛先と取引を始めるたびに、新規の契約手続きが発生します。
また、ファクタリング会社によって契約の流れが異なるだけでなく、担当者の対応が遅いケースもあります。
ただし、1つのファクタリング会社を継続して利用すれば契約の流れは同じなので、2回目以降の契約はスムーズに行えるでしょう。
ファクタリングをスムーズに利用するためには、最初のファクタリング会社選びが大切です。
電子記録債権を活用した「でんさいファクタリング」
でんさいの仕組みを利用し、でんさいとファクタリングのいいとこ取りをしたのが、「でんさいファクタリング」です。
でんさいファクタリングとは、自社が登録した電子債権(売掛金)を、でんさいネットの加盟金融機関に売却することで、入金日よりも前に資金化できるサービスです。
でんさいファクタリングは、でんさいネットという共通のプラットフォームを利用するため、申込みから入金までのやりとりがスムーズです。
次の項目では、でんさいファクタリングのメリットやデメリットを説明していきます。
でんさいファクタリングのメリット3つ
でんさいファクタリングを利用するメリットは3つあります。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
①資金調達が簡単にできる
通常のファクタリングと同様、でんさいファクタリングを利用するためには、支払企業・納入企業ともに審査を通す必要があります。
ファクタリング会社の審査以外にも、でんさいネットへ加入する際に審査が行われます。しかし、でんさいファクタリングでは、納入企業にかぎり、でんさいネットへの加入は必要ありません。
納入企業は、ファクタリング会社が行う簡易審査だけでよいため、簡単に資金調達ができます。
②手数料が低い
でんさいファクタリングでは、でんさいネットに登録する際に審査が行われ、株式会社全銀電子債権ネットワーク(全銀)が、支払企業の信用情報を把握します。
言い換えれば、信用力が高い支払企業のみが、でんさいネットに登録できます。
つまり、ファクタリング会社は、通常のファクタリングよりも、売掛金の貸し倒れリスクを負っていません。
そのため、貸し倒れリスクのある「2社間ファクタリング」などとくらべても、でんさいファクタリングの手数料は低く設定されています。
③返済義務が無い
でんさいを利用した取引の問題点として、でんさいの債務者(支払企業)が倒産や経営破たんに陥った場合、債権者(納入企業)が支払い義務を負うという点がありました。
でんさいファクタリングは、通常のでんさい取引と違い、ファクタリングサービスの一種です。
そのため、万が一でんさいが貸し倒れても、でんさいの返済義務はファクタリング会社が負います。
でんさいファクタリングを利用すれば、でんさいの譲渡を行ってから、売掛先が倒産したり、支払いができなくなったりしても、返金に応じる義務はありません。
でんさいファクタリングのデメリット4つ
一方で、でんさいファクタリングを利用するデメリットは4つあります。
それぞれ詳しく解説しますので、メリットとデメリットを比較し、本当に自社に合ったサービスかどうか検討してください。
①「でんさいネット」へ登録する必要がある
でんさいファクタリングでは、支払企業がでんさいネットに加盟し、売掛金をでんさいとして登録しなければなりません。
支払企業がでんさいネットに加盟していない場合は、そもそもでんさいファクタリングを利用できません。
納入企業の場合、でんさいネットへの登録は必要ありません。
しかし、でんさいファクタリングの利用をお考えの場合は、支払企業がでんさいネットに登録しているかどうか、あらかじめ確認しておきましょう。
②利用できるファクタリング会社が少ない
でんさいファクタリングを提供しているのは、でんさいネットの加盟金融機関か、そのグループ企業のみです。
そのため、でんさいファクタリングを提供している会社はそれほど多くありません。
ファクタリング会社が少ないため、利用者側の選択肢の幅が狭く、サービス内容を比較検討しづらいのが現状です。
③売掛先に承諾を得る必要がある
でんさいファクタリングを利用する場合、売掛先に承諾を得る必要があります。
この点は、支払企業、納入企業、ファクタリング会社の3社間で契約を結ぶ「3社間ファクタリング」と同様です。
そのため、「資金繰りが厳しいのではないか」「銀行融資を受けられないのではないか」など、売掛先にネガティブなイメージを持たれてしまう可能性があります。
④資金調達に時間がかかる
通常のファクタリングでは、資金調達にあまり時間がかかりません。
とくに納入企業、ファクタリング会社の2社間で契約を結ぶ「2社間ファクタリング」は、最短即日で入金してくれるケースがほとんどです。
しかし、でんさいファクタリングは、最短即日での入金には対応していません。
そのため、でんさいファクタリングは急ぎの資金調達には向いていません。
急な出費が発生した場合や、仕入れ費や人件費を支払うお金がなくなった場合は、最短即日での資金調達が可能な「2社間ファクタリング」を利用しましょう。
法人だけでなく個人事業主の方でもご利用いただけますので、他社で断られたという方もまずはご相談ください。
また、低手数料で利用できる「3社間ファクタリング」も取り扱っております。
「とにかく手数料を抑えたい!」と考えている方は、見積もりをとっていただくことをおすすめします。
お客様のお悩みに合ったサービスをご提案いたしますので、安心してご相談ください。